鑑賞記録:『伊豆の踊子』(吉永小百合・高橋英樹主演版)

原作と違って現代から始まるのに最初は戸惑った。
教えているのはどうやら哲学(カント?)らしい。
主人公の学生がやがて大学教授になったという設定のようだ。
交際中の女性との結婚を親に反対されている学生が、教授なら親も納得するだろうと仲人を頼んでくる。
相手の女性がダンサーだというのを聞いて、かつて伊豆でであった踊り子の記憶が鮮明によみがえる。

現代が白黒で、過去がカラーで描かれているのは、教授の心境の反映だろうか。あるいは単に、その記憶の鮮烈さを強調したものか。

とにかく吉永小百合演じる踊り子が可憐。
もう、この役を演じられる女優は今はいないんじゃないかと思うくらいだった。
お座敷で酔った客に覆いかぶさられたりもして、性の対象としても見られる踊り子だが、まだ幼さと無邪気さ残している事が、彼女の特別感となっている。
病になっても男に身を売ることを強要される女性を同時に描くことで、いつそちら側に行くかもわからない危うさの中に踊り子は身をおいていることが示される。
実際、学生も彼女が今夜男と床を共にするのではと不安にかられ夢に見ている。お座敷や学生を追いかける途中に男に絡まれるところを助けてくれる若旦那でさえ「いいだろう、生娘だぜ」と発言する。
彼女の価値はまだ誰にも蹂躙されていない汚れなき存在であることなのだ。

今の感覚でいえば、下田では別れたとしても本気なら大島(一座の故郷)まで迎えに行けよとか思ってしまうけれど、まあそこは時代のせいにしておく。
映画は、恋人と手をとって駆けていく学生の姿を見つめる教授の姿で閉じるが、時代の違いを強調する意味もあるのだろう。自分がなし得なかったことをしてみせる学生に何を思うのか。

蛇足だが、若い頃の高橋英樹の姿は貴重。自分はバラエティでしか見ないもので。

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