鑑賞記録『ショコラ』(Chocolat)の感想と関係のない話

夜一人になると気分が沈んでしまうので

映画でも観ようと適当に選んで観ることにした。

これをラブストーリーに分類するのは間違ってないかと

某レンタルショップの分類法には疑問を抱いている。

確かに主人公とジョニー・デップ演じる青年は恋仲になるけど、

おまけみたいなものだろうとしか思えない。

そんな分類のことはどうでもいいとして

つらつらとくだらない感想を書き留めることにする。

 

舞台はフランスのある村。

敬虔なキリスト教徒で人々の模範たらんとするレノ伯爵が村長を務めている。

四旬節の断食の期間に入った頃、ヴィアンヌとアヌークの親子がやってきて

中南米風の装飾を施したチョコレート店を開く。

子供がいるが結婚はしていないと話し、教会にも通わないというヴィアンヌを

好ましくない異端者とみなしたレノ伯爵は、村人に彼女とのかかわりを禁じる。

しかし、ヴィアンヌの明るく朗らかな性格と彼女の差し出すチョコレートの

不思議な力に村人は惹かれ始める。

 

簡単にまとめてしまうと、保守的な村で自分を抑えて生きていた人々が、

不思議な人物の登場で変化していき幸せになるというタイプの物語。

ただ、ヴィアンヌと対立するレノ伯爵も敵役ではあるが悪人というわけではなく

弱さを抱えた一人の人間として描かれていて救いのある話。

人目を気にし、かくあらねばならないという思いに縛られた人間が

解放され自由になっていく姿を描いている。

興味深いのは、その解放が主人公にも訪れること。

ヴィアンヌもまた自分に縛られた人間の一人なのだ。

 

人々の心をほぐし、人間関係を変えていく力を持つヴィアンヌだが、

彼女は決して魔法使いでもなんでもなく普通の人間。

それはルーと出会うことでより見えてくる。

娘を連れて各地を転々としてきたヴィアンヌと

船を住処とし定住しないルーは写し鏡のような存在。

ルーとの関わりの中でヴィアンヌの弱さも描かれる。

 

大家のアルマンドが旅から旅への生活を娘は嫌がらないかと尋ねた時

ヴィアンヌは娘は嫌がらないし良い経験になっていると答えていた。

しかし、実際はそうではない。

ボイコットの呼びかけを無視し流れ者ののルーとつきあうヴィアンヌを

レノ伯爵が教会の説教を利用して悪魔のような存在だと村人たちに諭した後、

村人たちは再びヴィアンヌを避けはじめ、アヌークもその影響を受ける。

ヴィアンヌは悪魔なのか?何故教会に行かないのか?何故他の母親と違うのか?

アヌークが心からこれまでの生活を楽しんでいたら出てはこない言葉だ。

ルーがアルマンドと同じ質問をした時、アヌークが本当は嫌がっていることを

ヴィアンヌは認めざるをえなかった。

追い打ちをかけるのが理解者アルマンドの死。

これまでヴィアンヌの店でチョコレートを楽しんでいたアルマンドだが、

実は重い糖尿病を患っていた。

孤立するヴィアンヌを村人と結びつけるために誕生パーティーを開いたアルマンド

翌日には治療院に入ると約束してのことだったが、朝を待たず亡くなってしまう。

ショックを受け責任も感じたヴィアンヌは村を出る決意をする。

そこで気になるのが荷造りするヴィアンヌが話しかけていた壺。

壺を見つめ「そうよ。なんとでもいってママ」と言うヴィアンヌ。

母と娘の問題を抱えているのはヴィアンヌもまた同じだった。

 

ある夜アヌークがヴィアンヌにせがんだ話に鍵がある。 

薬の調査研究のために中米に渡ったアヌークの祖父つまりヴィアンヌの父は

そこでチザという女性に出会う。

彼女は北風に乗って村々を回り古代の薬で人々を癒す一族の末裔。 

定住を拒む一族の人間だから花嫁には向かないという長老たちの忠告を無視し

彼はチザと結婚するが、ある日娘を連れてチザは姿を消してしまう。

この話が本当なら、ヴィアンヌも母とともに放浪の生活を送っていたことになる。

ここで疑問が湧いてくる。

村々を旅して生きる今までの生き方はヴィアンヌが心から望んだものだったのか?

ルーとの会話でも、「今度はうまくいきそう」だという言葉があり、

ヴィアンヌはそれなりに定住を望んでいることがわかる。

旅から旅の生き方は母チザの選んだ生き方。

ヴィアンヌも今のアヌークのように悩んでいたのかもしれない。

北風が再びヴィアンヌを旅に誘う時、ヴィアンヌは空に灰のようなものをまく。

恐らくこれは母親の遺灰。

まだ見ぬ友を求め、まだいる敵と戦うのはもうヴィアンヌの役目ではない。

ヴィアンヌは魔法使いでも聖者でもないただの人間なのだ。

彼女が村に留まる選択をした時、ヴィアンヌは母チザの生き方から解放される。

同時にアヌークは母ヴィアンヌの生き方から解放されたのだと思う。

映画の最後で、アヌークの空想の友達であるカンガルーが去っていく。

傷ついてどこにも行けないカンガルーという空想の友人は

アヌークにはもう必要ないのだ。 

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以下、蛇足。

個人的に好きだったのは大家のアルマンド

(自由な生き方の母に反発した娘は厳格に育ち、悪影響だからと息子を

祖母であるアルマンドに合わせようとしなかった)

祖父母と孫という関係を描いているものには弱いせいかもしれないが。

誕生パーティーの時に孫のリュックが肖像画をプレゼントするシーンで

不覚にも涙してしまった。

いや、母親に会うのを禁じられていたわりに、祖母思いの良い孫じゃないか。

正直、主人公がどうなろうがアヌークがどうなろうがどうでもよくて、

アルマンドが亡くなったことがショックだった。

幸せになれよリュック。