鑑賞記録『男はつらいよ 寅次郎物語』

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今回はマドンナとの関係というより、秀吉少年の母親探しが主になっている。

そして、「寅次郎物語」という副題が示すように、秀吉少年の存在を通して、

寅さんとはどんな人間なのか、寅さんの自己規定を再確認することになる。

秀吉少年と母親が無事に再会できたのを見届けると、寅さんは自分の役目は

終わったとばかりに旅立とうとする。一緒にいたいという少年に向かって、

寅さんは、自分はお前の父親と同類なのだと一喝する。

秀吉少年の父親は、背中に般若の入れ墨を入れ、飲む・打つ・買うの三拍子

揃った男で、妻が酒を飲むのをたしなめようものなら、髪の毛を掴んで

引きずりまわすような男。それに比べれば寅さんはましな方なのだけれど。

 

印象的だったのは、柴又に帰ってからの寅さんとさくらとのやり取りの場面。

帰って早々に出発しようとする寅さんに、さくらはそんなに急いで働かなくてもと言う。

それを受けて寅さんは、働くといいうのは、博(さくらの夫)のように、

妻や子供のために額に汗し、手を真っ黒にして働く人たちのことをいうのだと、

さくらに語る。

自分は口から出まかせにインチキなものを売り、客も承知でそれを買う

そんなところで飯を食っているのは「働く」とは言わない。

それがわかっていながら「働く」ことができない寅さんは

それが渡世人の辛いところだと言い残して去る。

見送る満男に「人間はなんで生きているのか」という問いを投げかけられる。

ここで適当にはぐらかさないで、きちんと自分の言葉で答えるのが寅さんだ。

生きていれば「生まれてきてよかった」と思う瞬間が何度かあるだろう、

人間は「生まれてきてよかった」と思うために生きているのではないかと答える。

 

自分はなんのために生きているのだろう。