読書記録~夏目漱石『門』

旅先にて新潮文庫版『門』を読了したので一応記録しておく。

『門』は、『三四郎』『それから』に続く漱石の初期三部作と習ったが、3作品の中で最も好きだ。

秋日和の一日から冬を越し春を迎えるまでが物語の時間。

その間、季節に呼応するかのように主人公夫婦の前に頭を悩ませる問題が起きる。

穏やかな一日を過ごしていた夫婦の過去には実は秘密があって、その秘密と今日の問題が重なってくるところがスリリングでたまらない。

眼前の問題を解くために、妻が選んだのは占いで、夫が選んだのは禅の道だが、どちらも2人を助けはしない。

過去はあくまで過去として重くのしかかり続ける。この世界を押し広げて行った先に『こころ』が出てくる気がする。

物語の最後に

 

「本当に有難いわね。漸くの事春になって」

 

と言う妻に対して、宗助が返す

 

「うん、然し又じき冬になるよ」

 

という言葉の意味は、彼が越えた季節の事を考えると感慨深いものがある。

門 (新潮文庫)

門 (新潮文庫)